黙祷によって見えなくなるもの
それは周りの景色。
東日本大震災から1年後の3月11日。
当時勤務していたスーパーで、地震の発生時間に黙祷をするという。
レジ担当以外の従業員は各持ち場で
お急ぎでなければ店内のお客さんも一緒に、というスタンスだった。
時間になる前に、店長が警備員さんに頼みごとをした。
「黙祷の時間中、店内の巡回強化をお願いします。万引きが狙うと思うので」
そう、周りが黙祷している状態なら、何をやってもバレないのだ。
レジが混んでいたため私はレジにいたのだが、目の前のお客さんをはじめ多くのお客さんが黙祷していた。
ありがたいことだ。店の企画なのに。
祈ることそれ自体が役に立つ訳ではないだろうが、
少しでも意識を向けることは大切だと思う。
しかし黙祷は行為としては「目をつむる」ことだ。
その間、周りで何が起きているかは分からない。
外にいたとして、運転をミスした自動車がこちらに向かっているかもしれない。
怪しいやつ(どんなやつだ)が忍び寄っているかもしれない。
祈りを捧げるなら、安全な場所で。
祈るだけでなく、具体的な行動も。